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兄は恐らく笑顔で、 手には女用のサンタの服を持っている……地味に露出の多い。
お兄様よ、 何で持ってる? そして今は夏だ、 そして実は変態だろ? それ俺に着させたくて買ったんだろ? 99%。
『静かに移動しなきゃ』
「優李ー? どこかなぁ? 」
お兄ちゃんが店内の左奥に在る漫画コーナーに行くと、 俺はすかさず真逆のレジへ静かに移動した。
── が、 足音が少し立ってしまい、 兄が振り向く……俺は間一髪で店内右側の自動ドア付近の料理系の物の本棚に隠れた。
「そっちかな? 」
怖いよ本当に! 殺人犯とかから逃げてる気分だよ! お兄様よ、 本当に弟の事が好きなのかな!?
だとしたら見逃してくれても良くない!? そんなに髪の毛切っちゃダメだったのかよ!!
お兄ちゃんはレジ付近を捜している……俺はお兄ちゃんと真逆の方へゆっくりと動き、 本棚を一周し、 お兄ちゃんが別の方へ行くと同時にレジ側へ着いた。
『よし、 着いた。 へへっ、 鍵も普通に置いてあるぜ! ……盗まれたらどうすんの』
俺は鍵を持ってしゃがみながらレジ横から辺りを見渡す……暗くてどこだか分からない。
カチッ。
その瞬間電気が点いた。
やべぇ、 すぐバレちまう!
「優李はどこかなぁ? 」
兄がトイレの方へ行ったから、 そっとドアの鍵を自動ドア専用の鍵穴へ差し込む。
そして急いで外に出る。
「良かった、 何とか助かったな」
現在午後8時なので、 外はとても暗い……とりあえず街灯の在る所へ行こう、 と公園に向かおうとした時だった。
「んぐっ!? 」
何者かに口と手を塞がれ誰も居ない狭い通路に連れてかれる。
俺が手を振り払い後ろに向くと、 そこにはお兄ちゃんが居た……げ、 そりゃ店の前に居たらバレちまうか……。
冷や汗が首を伝う。
そして身体が震えだす。
「髪切ったから、 お兄ちゃん悲しかったんだよ」
「いや、 だって正直邪魔だったんだもん。 それに俺の髪の毛だぜ、 俺が決める」
お兄ちゃんは悲しそうな表情でこちらを見、 何かを見せて来た……げぇ、 さっきのサンタの……。
「これ、 着て欲しいな」
「それで買い物は絶対嫌だから!! 」
お兄ちゃんは1度溜息を吐くと、 首を振った。
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