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「何でお兄ちゃんが謝るんだよ。 悪いのはあのババアだろ」
「こら、 ババアなんて言っちゃダメでしょ? 」
へいへい、 俺はテキトーにスルーして二階に上がって行った。
「すみませーん」
「あ、 はーい! 」
ふん……お兄ちゃんは客の事ばかりだな。
────
「いてっ。 何だ、 かすり傷かと思ったら切り傷になってんのか」
俺は二階で消毒をした後絆創膏を貼り、 ふと目の前のガラスに写る自分を見た。
「俺……そんな女みたいな顔してるのかな。 自分ではよく分からないけど……」
そうは言うものの、 自分の眼にも可愛らしい小さな女の子が写ってるように見えてしまう。
俺は溜息を吐き、 部屋で宿題をやった。
頭では兄の事を考えているせいか、 全然捗らない……もう、 何が何だか……。
「お兄ちゃんは俺が女の方が良かったのかな……」
俺は喧嘩の疲れが出て来て眠ってしまった。
────。
「ん……」
眼が覚めると、 俺の上には毛布が掛かっていた。
お兄ちゃんの匂いがする……。
俺は毛布の匂いを嗅ごうとした。
「あ、 起きたんだ良かった良かった。 さ、 ご飯にしようか」
ドアを開けてお兄ちゃんが入って来た。
タイミング! 後一歩早かったら俺のヤバいシーン見られてたから! 空気読め! もう……。
お兄ちゃんはシチューを作って来た。
味はマジで美味い……こんなんだからモテんだろうなぁ……。
その時、 俺の口からは自然と言葉が出ていた。
「お兄ちゃんはモテるから……俺なんか目にないよな……」
あ、 ヤバい。
声に出しちゃった、 引かれる、 絶対関係悪くなる……最悪だ。
実は俺は、 小さい時から兄の事を心から好きになっていて、 今が初めての告白だった。
「悪りぃ、 忘れて」
俺が立ち上がると、 お兄ちゃんは手を掴んできた。
「優李。 座って、 まだご飯終わってないでしょ」
「うん……」
最悪だよ、 こんなの。
そればかり考えていると、 お兄ちゃんは眼鏡を拭きながら話し始めた。
「僕は……優李の気持ちに気づいてたよ」
「え!? 」
どう言う事だ!? そんな仕草も見せた事ないのに……。
お兄ちゃんは続けた。
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