(2)無景の迷路

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(2)無景の迷路

その日、僕はまっすぐ家に帰らなかった。 いつも通り、ぴったり10分で掃除を終わらせた。 1つも寸分の狂いもなく終わらせた。 すると、隣のクラスから、 「おい、実!ちょっといいかい?」  小学校の頃からの縁の天草あまくさ竜りゅうの声だった。 「なんだい? 竜くん」 「今日、カラオケ行こうぜ!カラオケ!」 「うん。 いいよ」  友達の定義を学習したこともないし、友達になる条件も分からない為、彼を友達だとは思ったことはない。「竜くん」の呼び名も彼が呼んでくれと頼むからそう呼んでいる。 彼の印象は、「明るい」「運動神経のいい」「僕とは小学校の時からの縁でよく僕に話しかけてくる」だ。 ただし、それは僕の周りの人間が言っていたことであり、僕は特に彼には何も思わない。 僕の周りの人間は人のいい彼に好意を抱いている者が多い。 全く、僕の周りは変人ばかりだ。 赤の他人に十人十色で思うことがあるなんて。 僕は普通の高校生ゆえ彼には何も思わない。 「な、なぁ、実。 今日さ、もう2人……メンバーがいるんだ」 「そうなの? 別に構わないけど何? 僕の知ってる人?」 「い、いやぁ。 知らない。 2人とも女なんだ。 実、大丈夫かい?」 「そうなんだ。 大丈夫だよ」 「相変わらず無機質だなぁ、実は。 羨ましいぜ、おれ緊張してる……」  そうこうしてカラオケボックスに着く。時刻は4時。 30分後に女達が来るらしい。 「どうする? 先楽しんで部屋温めとく?」 「そうだね。 まぁいつも通り、竜くんが1人で歌うんでしょ」  僕達が先に楽しんで、部屋を温めて間もなく、竜くんの呼んだ女達が部屋へと入ってきた。 「初めまして~。ミクで~す。 こっちがマキ」 「や、やぁ。 待っていたよ」  僕も竜くんの挨拶に合わせてペコっとお辞儀をした。 そして今ここで、2:2の合コンだと言うことを悟った。 何処の高校かは知らないが彼女達も制服を着ている。見た目は同い年くらいに見える。 
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