「何の取り柄もない15歳の少年が脱出率0%の迷路の脱出方法を証明せよ。ただし、彼が何の取り柄もないのが取り柄な故、異端であることは考えないものとする。」

（1）なんの取り柄もない少年について

……少し、自己紹介をしても構わないかい？ この話は僕の人柄を理解して頂かないと話が進まないんだ。 ありがとう。 君とは上手くやっていけそうだよ。
　初めまして。 僕の名前は田中たなか実みのる。 ちなみにこれは日本一多いフルネームだ。 僕の人柄を自分で説明すると、僕はまぁ普通だ。何処にでもいるだの、何の取り柄もないだのって言葉が世界で1番似合う、それ程までに普通で普遍だ。 成績も運動能力もぴったり平均。 誇れる趣味、特技はないが、普通に友人関係を築いてきたし、普通に恋もしてきた。 そこにはいるが、いざ居なくなっても誰も困らないそんな普通の15歳。 人に迷惑は掛けないが、人からも迷惑を掛けられない、そんな普通の15歳。 人を悲しませもしないが、喜ばせもしない、そんな普通の15歳。