第1号

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職員室を後にして、夕日が差し込む廊下を教室に向かって歩く。楽器の音や野球部の掛け声など、部活動に励む生徒達の発する音が、学校の敷地内を充実感で満たしていた。 教室に向かう途中にある自動販売機でコーヒー牛乳を買い教室に戻った。開いた窓から差し込む夕日が、机や1人の男子生徒の影を作り出していた。 「ごめん、待たせた」 「あー別に大丈夫、これからどうする?」 「えー、後で考える」 俺の席に座る男子生徒に謝り、自分の席の一つ前の席に座る。 俺の席に座ってるのは、小学校から同級生の工藤來樹。綺麗に整った顔に色素の薄い髪を首元まで伸ばし、服装によっては女の子に間違われるような容姿をしていた。1年生で唯一同じ地域の出身で、小学校から現在まで関係が続いており、お互いのことをよく理解したいわゆる親友というやつだ。1年生の中で学力1位の実力を持ち、運動も人並みにできる。加えて、クラスのみんなからの信頼も入学早々に獲得したことにより、來樹の周りは常にクラスの連中で賑わっていた。俺とは、大違いだ。 「湊、最近何か感じた?」 「いや、俺はなにもないけど、來樹は?」 「俺もなにも」 「高校に入ってから感じなくなったよな?」 「あぁ、ある意味不安になるよ」 周りからしたら訳のわからない会話をしながら、俺たちはそこで時間を潰した。日は徐々に落ちていき、もうそろそろ沈みきる頃だ。校内に聞こえていた楽器の音はいつの間にか聞こえなくなり、野球部の掛け声だけがわずかに聞こえていた。 「今日何時に帰る?」 そう言って來樹は自分の席に戻り、帰り支度を始めた。 「どっちでもいいな、來樹どっち?」 「俺もどっちでもいいな」 「じゃあ、早く帰るか」 買って飲んでいなかったコーヒー牛乳の存在に気づき、ストローを袋から出して差し込む。何口か飲んでから來樹にパスして自分も帰り支度をした。 「相変わらずコーヒー牛乳好きだね」 中身の残ったコーヒー牛乳を手に持ってフラフラさせながら、來樹が教室の外で待っていた。 「当たり前」 机の中や周りに忘れ物がないか確認し、バックパックを背負った。もう野球部の掛け声も聞こえなくなり、1日が終わったような雰囲気が流れる教室を後にして、俺たちは昇降口に向かった。
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