ここが、始まり

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いつものように冷え込んだ夜。誰もいない国道沿いに立ち、周りを見る。一台の自動販売機がその光で、この世界に強い存在感を放っているように見えた。道路の先を眺めてみたが車が来る気配はなく、この時間に出歩く者はいなそうだ。 寒さに耐えるのも辛くなり、自動販売機で温かい缶珈琲を買った。手に持った缶の温もりを感じながら空を見上げると、いつものように綺麗な星空が広がっている。 そういえば、冬は乾燥して肌が荒れると学校で女子達が騒いでいたのを思い出した。一度でいいから彼女たちにも、この時期の夜空を見てほしいものだ。きっと毎日保湿クリームを塗りたくって空を見たくなるはずだ。乾燥して星がよく見えるこの季節が、自分は嫌いじゃない。無論、寒さ以外は、だ。 ぬるくなる前にと思い、缶珈琲を開けて一口飲んだが既に遅かったようだ。ぬるくなっていたが、じわりと身体に染みる温かさを感じて、少し心が和む。 毎年この時期の夜空には、星が群を作って光を放っている。こんなに綺麗に星が見えるのは、この何もない街のおかげなのだろう。民家だらけのこの街に背の高い建物はなく、夜遅くまで明かりをつける家も無い。夜通し明かりのある建物はコンビニと小さな居酒屋くらいだろう。東京のような都会は、人も街も眠らず若く活発な印象があるが、この街はもう歳老いて今にも寝たきりになりそうな印象だ。ここは一つ、少子高齢化問題に向き合うと同時に、街の高齢化問題にも向き合ってみてはどうだろうか。
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