沈丁花

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「バイト先の客がストーカーになりそうなんだよね」 昼休み、お弁当のシャケを箸でほぐしながら白状した白谷沙羅に、 「なんですってぇ!」 鴻上ツボミは椅子を蹴立てて立ち上がる。 「サイテー最悪、そんなヤツ死ねばいい。ヘンタイじゃん」 客観的に見ても可愛らしい顔立ちをしているツボミだが、直情型で、口を開けば顔に似合わぬ悪口雑言がポンポン飛び出してくる。 男に媚びを売る話し方をされるより、よっぽど好感が持てるが、 「もうそんなバイト、辞めちゃえよ」 思考が短絡的なところは、どうにもいただけない。 「あんたね、まだストーカーになったわけじゃないんだからね。私はなりそうって言っただけ」 沙羅はジトッとした目でツボミを睨む。 「それに、たかがバイトだけど、そう簡単に辞められるものでもないんだからね」 こちらにもいろいろ事情があるのだ。
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