沈丁花

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そしてもうひとり、 「沙羅ちゃん、カメヲのヒーターを新しくするんだって張り切ってるもんね」 のんびり言いながらパックの牛乳をすするのは、伊里優子。 ウェーブのかかった髪をふわふわさせて、おっとり優しいしゃべり方をする。 『優子も、ちょっと不思議ちゃんよね』 沙羅は苦笑を浮かべる。 『別に張り切ってなんかいないし』 そう思いながら、 「うんまあ、カメヲは寒がり屋さんだから」 優子に話を合わせてやる。 ちなみにカメヲとは、沙羅が飼っているクサガメのことである。 カメの飼育にヒーターは必需品だが、現在カメヲは水槽の底で冬眠中。 エサも食べないから、経費はほとんどかからない。 平和な話だけど、でも、のんびり散歩するカメヲの姿を眺められないことが、ここ最近の沙羅のストレスになっていることも本当だ。 『だから、こんなことでイライラするのかしら』 沙羅は、首を傾げた。
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