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2話 妖精
「君、その猫どうしたの?」
突然誰かにそう聞かれ、私はビクッとした。
「確か椎菜涼美さん、だよね?」
「えっと、あなたは…?」
話しかけてきたのは見知らぬ男子生徒だ。色白で私より背は高いけど男の子にしては小柄に見える。
「僕は榎戸 周、椎菜さんと同じクラスだよ。 」
「同じクラスだったんだ、昨日が入学式だったのに…よく覚えてますね。」
「人の名前と顔を覚えるのが得意なんだ、昔から。それよりその子猫はどこで?」
彼の記憶力に驚いていると彼は真剣な顔で子猫について聞いてきた。誤魔化しても仕方がないので私は正直に話すことにした。
「えっと、かくかくしかじかで…。」
――「なるほど、話してくれてありがとう。」
「えっと、どうすればいいのかな?この子。」
私がそう聞くと、ちょうど朝のホームルームの始まるチャイムが鳴った。
「とりあえず教室に急ごう椎菜さん!初日から遅刻はマズい。」
「で、でも子猫のことバレたら…。」
「大丈夫だよ、その子は賢いから急に鳴いたりはしない。」
確かに学校に入ってから子猫はみゃーみゃー鳴いていない。野良なのにお利口さんなんだなと感心していると、
「その子猫、妖精だから。」
彼は落ち着いた様子でそう言った。
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