【第一話】 私の知らない旦那様

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「ちゅうー」 「おい、桜井。寝ぼけるな」 「あれっ……タコ?」 突然掛けられた声に目を開けると、タキシード姿の旦那さまがタコ人間に変わっていた。 「誰がタコだ! 彼氏とキスをする夢でも見ていたのか?」 一斉に笑い声が上がる。 あれっ? 旦那さまは? ここは、どこ? 視界に飛び込んできたのは、見覚えのある教室にクラスメイト。そして、タコ人間。じゃなくて、数学の伊能(いのう)先生。 …… …… どっ、どういう事なの!? ウエディングドレスは!? なんで中学生の制服を着てるの!?  それに、胸が無い!  いや、無いんじゃなくて小さいのか……って、安心してる場合じゃ無かった。 落ち着け、落ち着くのよ。私は結婚式をしていたはず。 「どうしたんだ、落ち着きなくキョロキョロして。体調が悪いのか?」 「あっ、えっと……はい」 「誰か、桜井を保健室に連れて行ってやれ」 「だっ、大丈夫です、平気です! 一人で行けます!」 クラスメイトの視線を背中に感じながら、バタバタと教室を飛び出した。
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