【第一話】 私の知らない旦那様

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振り返った瞳に、信じられない光景が映し出された。 女の子が嫉妬しちゃうような柔らかい髪。切れ長の涼しげな目元に、キリッと結ばれた唇。 初恋の彼の記憶が鮮明に蘇り、目の前の彼と重なる。 凍夜くんだ、凍夜くんだ、凍夜くんだ!  やっぱり、初恋の彼は如月凍夜(きさらぎ とうや)くんだったんだ。  どうしよう……十七歳の凍夜くんだよ?  ブレザー着てる……ううっ……カッコよくて可愛いよ…… 「どうした? ボーっとして」 「ふっ、ふぇぇぇ……」 「うわっ! なんで泣くんだ!?」 「だって……凍夜くんが……凍夜くんが……」 本当に、凍夜くんと学生時代の思い出が作れるの? もう一度、恋をしていいの?  「俺、何かしたか? それに、なんで名前を」 「だって……だって……嬉しくて……」 「答えになってないぞ。あー、もう……泣くなよ。まったく……」 手を強く握られ、桜並木の真ん中へ連れていかれる。 「ほら、上見てみろ」 言われるがまま顔を上げた。桜の隙間から差し込む木漏れ日が、舞い散る桜の花びらをキラキラと輝かせている。 「きれい……」 幻想的な情景に心を奪われ、いつしか涙は止まっていた。 「俺しか知らない場所。そう言えば、名前聞いて無かったな」 「美空……桜井美空(さくらい みく)」 「そうか。何で泣いてるのか知らないけど、元気だせよ」 頭を二回、ポンポンとされる。火が出そうなくらい、顔が真っ赤に染まった。
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