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振り返った瞳に、信じられない光景が映し出された。
女の子が嫉妬しちゃうような柔らかい髪。切れ長の涼しげな目元に、キリッと結ばれた唇。
初恋の彼の記憶が鮮明に蘇り、目の前の彼と重なる。
凍夜くんだ、凍夜くんだ、凍夜くんだ!
やっぱり、初恋の彼は如月凍夜くんだったんだ。
どうしよう……十七歳の凍夜くんだよ?
ブレザー着てる……ううっ……カッコよくて可愛いよ……
「どうした? ボーっとして」
「ふっ、ふぇぇぇ……」
「うわっ! なんで泣くんだ!?」
「だって……凍夜くんが……凍夜くんが……」
本当に、凍夜くんと学生時代の思い出が作れるの? もう一度、恋をしていいの?
「俺、何かしたか? それに、なんで名前を」
「だって……だって……嬉しくて……」
「答えになってないぞ。あー、もう……泣くなよ。まったく……」
手を強く握られ、桜並木の真ん中へ連れていかれる。
「ほら、上見てみろ」
言われるがまま顔を上げた。桜の隙間から差し込む木漏れ日が、舞い散る桜の花びらをキラキラと輝かせている。
「きれい……」
幻想的な情景に心を奪われ、いつしか涙は止まっていた。
「俺しか知らない場所。そう言えば、名前聞いて無かったな」
「美空……桜井美空」
「そうか。何で泣いてるのか知らないけど、元気だせよ」
頭を二回、ポンポンとされる。火が出そうなくらい、顔が真っ赤に染まった。
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