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「それで、なんでここに?」
「その……桜が……綺麗だなって……とっ、凍夜くんは?」
「寝坊したんだ。急いで学校に来たんだけど、お気に入りの場所に女の子がいたから声を掛けた。それだけだよ。さてと、そろそろ教室に行かないと……」
「あっ、待って」
ここで凍夜くんと別れたら、次はいつ会えるか分からない。何か切っ掛けを……
「どうした?」
「えっと……ここがお気に入りの場所ってことは……桜が好きなんだよね? 私の家の近くに、ライトアップされた夜桜を見れる場所があるの。凍夜くんは特別な場所を教えてくれたから……私も……その……」
ハッキリと言葉にできない。
急にこんな事を言い出すなんて、絶対に変な女の子と思われた。だって、私は知ってるけど、凍夜くんから見れば初対面の女の子だよ?
じっと見つめてくる凍夜くんの視線が、痛いくらいに胸を締め付ける。
「特別な場所を教えてくれるのか? でも、中学生が夜に歩き回れないだろ」
「そうだよね。やっぱりダメ……えっ!? だっ、大丈夫! 親は帰って来るの遅いし、凍夜くんが一緒なら怖いものなんてない! あっ……でも、変な噂が立つかも知れないね。そんなの、嫌だよね?」
不安を隠せずに、凍夜くんを見上げた。
反応を待つ数秒。ドキドキしすぎて、何か飛び出してしまいそう。
「別に構わない。どうせ暇だしな。美空はスマホ持ってるか?」
慌てて上着のポケットからスマホを取り出した。
「俺のラインを教えるから、何か送ってくれ」
「えっ、あっ、うん」
早く、何か送らないと。えっと、スタンプでいいよね。
「……パンダ?」
しまった! 中学生の頃に流行ってた、土下座パンダのスタンプを勢いで送っちゃった! パンダが『申し訳御座らぬ』と言って土下座しているスタンプ……今更だけど意味が分からない!
「これが流行っているのか。覚えとく」
覚えなくていいよ!?
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