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ほとんど寝れないまま朝が来てしまった。
同室の赤ちゃんが泣くと部屋を出ていく物音や、廊下を数人が往復するベビーベッドのタイヤ音を何度か聞いた。
授乳室まで行ってお世話をしている物音に、他人事のように、母親は寝不足で大変だなぁと思っていた。
でも、一番寝れていなかったのは、私なのかもしれない。
緊張状態から抜け出せずに、浅い眠りのまま何度も朝が来るのを待って、やっと朝になった。
七時半になると、母親が病室にきた。
最後の見納めに、大きなお腹を写真撮影し、
『もうすぐ会えるのはどんな子かな?』
なんて朝から笑顔。
「画像では、やたら鼻が大きかったから、鼻がデカイ赤ちゃんだよ。ちょっと可愛くないかも。」
なんて笑った。
そんなことより、
「お腹空きすぎて産む前に死にそう。あんなにキャベツ食べさせるから。もっと腹持ちある物たくさん食べれば良かったよ。」
母に空腹に耐えきれず八つ当たり。
『試合前の準備はバッチリだね、お姉ちゃんは術後貧血で倒れたけど、あなたはこれでもう大丈夫!』
「試合って…」
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