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「……それでお願いします」  約束が流れたのを寂しがったり、明日のことを不安に思ってるより、この人と飲んでる方がよっぽど前向きだと思った。  外に出て歩き始めると、お姉さんが言った。 「昨日は、あたしも酔っ払ってたから、自己紹介もしねえで悪かったな。もう竜に聞いたかも知れねぇけど、あたしは(せい)。聖人君子の聖な。笑えるだろ」 「今朝、聞きました。二人ともおじいさんが付けたから変な名前って、椿田さんが」 「変なのは竜だけだ。あたしは気に入ってる」  彼より三つ上だという聖さんは快活に笑う。この人を見てると、自分に自信が無いことなんて無いのかな、と思う。 「で、あんたは涼子な。竜から聞いた。23だって?よくあんなオッサンと居るな」 「……やっぱり、おかしいですか?」  一瞬、聖さんは真顔になって、それから言った。 「いや?……あたしも、そういう奴と居るし」 「え?」 「籍は入れてないけど、向こうで一緒に住んでるのは、還暦過ぎたジジイだ。笑えンだろ。それでも、やるこたやれるぜ。若い頃みたいには無理だけど。……なに、ぽかんとしてンだ。そんなにビックリするな」 「あ。はい……」  驚くなという方が無理だ。 「椿田さんは、それ知ってるんですか?」 「言ってない。一緒に住んでる相手が居るのは、親も竜も知ってるけど、どういう相手かは話してない」
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