2547人が本棚に入れています
本棚に追加
/299ページ
「せっかくここまで来たら会ってく?」
と江崎さんは言ってくれたけど、それも邪魔になる気がしたので遠慮して待ち合わせ場所に着く前に別れた。
19時少し前。どうしよう、と駅のコンコースで、人の流れを前に足を止めた。
帰ろうか。それともせっかく金曜だし、一人だけど映画でも見ていこうか。
と、考えていたその時、スマホが鳴った。
長い着信の鳴動に、なんだろう、と思って取り出す。
江崎さんが何か用があった、とかじゃないよな……。彼女が買ったもの、間違って持って来たでもないし。
画面を見て、わたしは慌てて手を滑らせそうになった。
「――――もしもし?」
「涼子か?……久しぶり、なところをいきなり悪いんだが、お前今どこだ」
その声は、確かに久しぶりに聞くけど、聞き慣れた声みたいに妙にしっくり耳に入ってくる。
「えっと、横浜駅ですけど」
「これから、なんか約束とかか?」
「いえ。……今まで会社の先輩と買物してたんですけど別れたとこで、どうしようかと思ってたとこで。……何も無いですけど」
「急で悪いけど、お前三浦までドライブ行くか?」
最初のコメントを投稿しよう!