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 彼はワイシャツのポケットから煙草を出して、器用に口で一本取り出して、シガーソケットで火を点ける。 「何見てんだ」 「なんとなく。煙草の匂いは苦手なこともありますけど、椿田さんがそうやって吸ってるの見るのは嫌いじゃないです」 「……そりゃどぉも。……」  第三京浜から横浜新道、横浜横須賀道路。夜だからか少し通りは少ない。 「そういえば、聞いてなかったけどお前、家どこだ」 「上大岡です」 「なら、帰りに降ろせるな」 「椿田さんは?」 「俺は鶴見。近くは飲み屋が多くて助かる」 「……一人暮らしですか」  そういえば、そんな基本的な話すらしていなかった。 「実家は静岡で今は両親だけで住んでる。三つ上の姉は今はアメリカ行ってるけど何やってんだか知らねえ」 「……お姉さん、独身なんですか?」 「バツイチ」  ……なんとなく想像がつく。
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