【4】

4/4
2532人が本棚に入れています
本棚に追加
/299ページ
「お前は?ひとりか?」 「弟が居ます。国立大の理系で、超優秀な」 「……なるほど」 「なんですか」 「別に」  外は暗い。対向車線は明るいけど、助手席の私の方は、時々外灯の明かりが車を飛び越すみたいに通り過ぎるほかは。 「……でも、ここ数年ほとんど話してないです。最近は、理系の研究室って忙しいらしくてほとんど家に帰らなくて、ゼミの友達の下宿に寝起きしてるみたいで」  これが明るいカフェでこの人と向き合ってたりしたら、もっと話し辛かったかもしれないな、と思う。 「……で、父ちゃんと母ちゃんも超優秀か?」  母は、私大付属小学校の教員。父は有名企業の部長。 「……なんで分かるんですか」 「なんとなく思っただけだ。……うちは農家で、だからってワケじゃねえけど、どっちもホント頭悪くてなぁ。スマホどころかケータイもろくに使えやしねえ。カメラの使い方とかいちいち聞いてくんなっつの」  私は笑った。 「なんか、楽しそう。みんな集まったら」 「楽しくねぇよ。このトシになって帰ったら、嫁はまだか、ってそれだけだ。近所も含めてな。俺は右から左だけど」 
/299ページ

最初のコメントを投稿しよう!