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「お前は?ひとりか?」
「弟が居ます。国立大の理系で、超優秀な」
「……なるほど」
「なんですか」
「別に」
外は暗い。対向車線は明るいけど、助手席の私の方は、時々外灯の明かりが車を飛び越すみたいに通り過ぎるほかは。
「……でも、ここ数年ほとんど話してないです。最近は、理系の研究室って忙しいらしくてほとんど家に帰らなくて、ゼミの友達の下宿に寝起きしてるみたいで」
これが明るいカフェでこの人と向き合ってたりしたら、もっと話し辛かったかもしれないな、と思う。
「……で、父ちゃんと母ちゃんも超優秀か?」
母は、私大付属小学校の教員。父は有名企業の部長。
「……なんで分かるんですか」
「なんとなく思っただけだ。……うちは農家で、だからってワケじゃねえけど、どっちもホント頭悪くてなぁ。スマホどころかケータイもろくに使えやしねえ。カメラの使い方とかいちいち聞いてくんなっつの」
私は笑った。
「なんか、楽しそう。みんな集まったら」
「楽しくねぇよ。このトシになって帰ったら、嫁はまだか、ってそれだけだ。近所も含めてな。俺は右から左だけど」
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