【12】

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 彼は笑って言った。 「ンじゃ、俺がこれからどこ行きたいと思ってるか。分かるか」 「……ここではちょっと」  休み前で、帰る人は真っ直ぐ帰ってしまうのか、いつもよりは空いているけど周りに人は居て、ラブホとかは口にしにくい。 「はずれ」 「え?」 「オメーが元気ねぇから、肉でも食い行こうかと思ってた。焼肉でもどうだ。……嫌いか?」 「あ。いえ。……嫌じゃないですけど、その……ニオイとかついたら嫌じゃないですか?わたしが」 「別に。それより体力つけろ。それでいいなら行くか」  喫茶店の外に出てから、わたしは彼に顔を寄せて言った。 「あの、今日はあれ、ちゃんと持って来ました。あの赤いの」  あの時、嫌がらせでもらった赤い下着の上下セット。泊まり用のバッグに入れてきた。  彼は一瞬考え、溜息をつくと、わたしのおでこをパチンと弾いた。 「痛っ。なんで……」 「身構えてねぇ時にいきなり爆弾投げんじゃねぇ。……想像しちまっただろが。ンで、歩きにくいだろ。馬鹿」 「……はい?」  両ポケットに手を入れて、肩と肘を張って歩き出した彼の後を追った。
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