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彼は笑って言った。
「ンじゃ、俺がこれからどこ行きたいと思ってるか。分かるか」
「……ここではちょっと」
休み前で、帰る人は真っ直ぐ帰ってしまうのか、いつもよりは空いているけど周りに人は居て、ラブホとかは口にしにくい。
「はずれ」
「え?」
「オメーが元気ねぇから、肉でも食い行こうかと思ってた。焼肉でもどうだ。……嫌いか?」
「あ。いえ。……嫌じゃないですけど、その……ニオイとかついたら嫌じゃないですか?わたしが」
「別に。それより体力つけろ。それでいいなら行くか」
喫茶店の外に出てから、わたしは彼に顔を寄せて言った。
「あの、今日はあれ、ちゃんと持って来ました。あの赤いの」
あの時、嫌がらせでもらった赤い下着の上下セット。泊まり用のバッグに入れてきた。
彼は一瞬考え、溜息をつくと、わたしのおでこをパチンと弾いた。
「痛っ。なんで……」
「身構えてねぇ時にいきなり爆弾投げんじゃねぇ。……想像しちまっただろが。ンで、歩きにくいだろ。馬鹿」
「……はい?」
両ポケットに手を入れて、肩と肘を張って歩き出した彼の後を追った。
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