2537人が本棚に入れています
本棚に追加
/299ページ
「――――ごちそうさまでした」
「どう致しまして。……ちょっと遠回りで歩いてもいいか。腹ごなしに」
「はい……」
ってほど、食べてない気がするけどな。このおじさん。
主に煙草と酒で、肉はわたしと半々くらいしか食べてないはずだ。
健康的にはどうかと思うけど、それだからまだお腹出たりしてないのかもしれないけど。
「なんか、すいませんでした。デザートまで、あたしの方がたくさん食べたのに」
「いいんじゃねーか。人の奢りの時ぐらい、食いたいだけ食っとけ」
「別に最初からそうだと思って食べたわけじゃ」
「分かってるよ」
繁華街から少し裏道に逸れると彼は煙草に火を点ける。さすがにこの人でも人の多い場所では吸わない。
「お前が最初から男にたかるような奴だったら、俺は最初から相手にしてねえ。気持ちだけで十分だ。こっちは、それが楽しみなんだから」
「……はい」
なぜか、顔と耳が熱くなってきた。
この人は、いつでも余裕があって、どう言ったらわたしが喜んだり安心するか、ちゃんと分かっていて……自分が小さく幼く思える。
最初のコメントを投稿しよう!