【12】

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「――――ごちそうさまでした」 「どう致しまして。……ちょっと遠回りで歩いてもいいか。腹ごなしに」 「はい……」  ってほど、食べてない気がするけどな。このおじさん。  主に煙草と酒で、肉はわたしと半々くらいしか食べてないはずだ。  健康的にはどうかと思うけど、それだからまだお腹出たりしてないのかもしれないけど。 「なんか、すいませんでした。デザートまで、あたしの方がたくさん食べたのに」 「いいんじゃねーか。人の奢りの時ぐらい、食いたいだけ食っとけ」 「別に最初からそうだと思って食べたわけじゃ」 「分かってるよ」  繁華街から少し裏道に逸れると彼は煙草に火を点ける。さすがにこの人でも人の多い場所では吸わない。 「お前が最初から男にたかるような奴だったら、俺は最初から相手にしてねえ。気持ちだけで十分だ。こっちは、それが楽しみなんだから」 「……はい」  なぜか、顔と耳が熱くなってきた。  この人は、いつでも余裕があって、どう言ったらわたしが喜んだり安心するか、ちゃんと分かっていて……自分が小さく幼く思える。
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