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ふいに両頬に手が置かれて、顔を覗き込まれてびっくりしていると、彼は言った。
「なんか、嫌なこと思い出したのか?」
あ。
……バレた。
「前来た時、言ってた奴か?……」
「それ……なんとなくあのままにして気にはなってたんですけど、言ったら椿田さんが気分悪くするかと思って」
わたしが俯くと、大きな手のひらが温かく頬を包む。
「……部分的にしか聞いてねぇけど、相当嫌な思いしたんだろうな、ってのは分かるから言わなかっただけだ。ただ、まだ引っ掛かってるなら……言いたくなけりゃこれからも言わなくて構わないけど、聞いて欲しいなら俺はいつでも聞く」
「……ありがとうございます」
額に彼の唇が触れた。瞼にも、鼻先にも。
そういう目的じゃないはずなのに、胸が鳴って、背中にぞくっと快感が走って、そのまま体を投げ出したくなる。
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