【16】

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 それから駅に着いて改札を出た頃に、わたしはふと気がついて言った。 「さっきの、……もしかして彼氏とかと来たのかと思ったんですか?」  彼は答えず、ポケットに両手を突っ込んで不機嫌そうに眉を寄せている。外に出てしばらく歩いてから、ぼそっと言う声がした。 「居たのか。そういう奴は」 「居ませんよ。ていうか、居たと思いますか。今のあたしを見ていて」 「……分かんねぇから、聞いてンだ。言っとくけど、俺はお前の過去は全然知らねえんだからな。そこはお互い様だろうが」  わたしだって、この人の昔のことは気にはなるけど、聞いたら気にしてしまいそうで怖い。自分の過去も話したくない。この人も聞かれたくないだろうと思うんだけど。 「それで居たのかどうなんだ」 「居ませんよ。ていうか、好きになったの自体初めてだって前に言ったじゃないですか」  そう言うと、彼は一瞬怪訝そうにわたしを見た。 「……なんですか?」 「いや、……それ、この前ホテルの部屋で飲んで飯食った時に……酔っ払う前に言ってたけど、それは覚えてんのか?」
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