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「……え?」
男の子は、黒のTシャツにジーンズ。偶然だけど、服装的には椿田さんをちっちゃくした感じ。
心配そうな眼で見られて、わたしは慌てて目元を拭う。
「え、えっと……別に、何でも……ないよ」
それでも、じいっとその子はわたしを見つめる。
何年生くらいなのか、子供に接する機会が無いから分からないけど、顔はまだ幼いけど、体はもう結構しっかりしてる感じだ。
「それより、きみ、一人?お父さんお母さんとか、お友達は?」
「……かーちゃんと来てるけど、今は一人」
答えるまでに、間があった。
「お母さんはどこに居るの」
「時間決めてあるから、ちゃんと後で戻る。ねえ、つらいときにはガマンしちゃいけないんだよ。かーちゃんも、ヒロも、いつも言うよ」
「……ヒロ?」
「かーちゃんの彼氏。あ。うちのとーちゃんは死んじゃったから。おれ小さい頃に」
――――複雑な家みたいだけど、虐待とかでは……ない、だろう。
辛い時には我慢するな、って言うくらいの彼氏なら、ちゃんとした人だろうし……。
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