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けど、……じゃあ、せっかく家族で休日にこんなところに来て、どうしてこの子は一人でうろついてて、わたしに声をかけたり……。
「――――おい。涼子」
降ってきた低い声に、どきっと胸が鳴った。
条件反射だ、と思うくらい、この人も、この人の声も好きなんだと自覚してしまう。
「なァに俺の居ない隙に、ナンパされてんだ。ずいぶん若ぇのに目つけられたじゃねェか」
「……若過ぎです」
椿田さんは階段を降りてくると、男の子の前に立って言った。
「おい。ガキ。俺の涼子に何か用か」
俺の、って……。
今そんな時じゃないし、子供にそういう言い方自体大人げないんだけど、……顔が熱くなる。
男の子は、一瞬気圧されたようだったけれど、負けまいとするみたいにキッと彼を見上げる。
「……おじさん。この人のなに?」
話が、振り出しに戻った。
「……あの、それは……」
「お前にゃ関係無ェだろ。俺の、って言ったら俺のだ」
答えになってない。
「この人泣いてたよ。なんだか分かんないけど彼氏ならちゃんと面倒みてあげなよ」
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