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「そうか」
と、椿田さんは表情を変えず、わたしの方も見ずに言う。
「他に、言いてぇことあるか」
「……別に、無いけど」
「じゃあ、親んとこ帰れ。大人がみんな黙って話聞くいい奴ばっかりだと思うんじゃねえ」
「椿田さ……あの、この子ちょっと事情ありそうで」
慌ててわたしが言っても、彼は動じない。
「聞いてた。戻ったら、ちっけぇのに口説かれてンから、何事かと思って話しかけられなかっただけだ」
「ちっさくねーよ。おれもう10歳だぞ」
「じゃ、4年か5年生ぐらいか?それにしちゃ小せェな」
「小さくない!背の順、半分より後ろだぞ」
……まるで子供の喧嘩だ。
と、思って見ていると、椿田さんは男の子の前にしゃがみ込んで、視線を合わせて言う。
「おい。ガキ。お前の家族がどんな家族でも、俺らの知ったこっちゃねえ。が、何か困ってるなら話は聞く。なンも困ってること無くて、ただ暇持て余して他人のことに首突っ込んでンなら、とっとと親のとこ帰れ」
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