2546人が本棚に入れています
本棚に追加
/299ページ
【18】
男の子は、口をつぐんで黙り込んだ。
冷たい言い方にも思えるけど、……間違っては、いない。
遠くで、親子連れの楽しそうな声が聞こえる。
小学4年生が、こんな場所で、ひとりで遊んで来いと突き離されるような年齢なのかどうか、わたしには分からない。
男の子は、言った。
「別に困ってることなんてない。けど、この人泣いてたのは本当だから、それは聞いてあげなよ」
「お前が居なくなったらな。……で、親と約束してるってのは、何時に約束してるんだ」
「……12時」
あと、20分くらいだ。
「どこで待ち合わせてるの?」
「決めてない。時間になったら電話することになってる」
と、男の子は子供用の携帯電話を見せる。
「……なるほど。今の子はそういうの持ってるんだよね」
わたしは、椿田さんを見上げた。
「……それくらいの時間なら、一緒にお茶飲んだりするくらい……ダメですか?余計なことかもしれないけど、このまま放り出すのは、なんか……ちょっと気になります」
最初のコメントを投稿しよう!