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 薄いピンクでパフスリーブの半袖ブラウス。胸元は大きく開いているのをリボンで絞って結ぶデザインのを江崎さんは手に取って言う。 「倉見さん似合いそう」 「え?……いや、ムリですって。こんな可愛いの」 「いや、似合うって。着るだけ着てみなよ。その人ともし会えることになったら、って感じで。前向き大事」  勢いに流され、試着して鏡の前に立っても、似合っているのかどうか以前に、こんな可愛らしい系の服を着たことが無いので、合ってるのかよく分からない。  ただ、今まで『何にでも合いそう』『皺にならなそう』『毛玉が出来なそう』もしくはコスパ重視、などの理由で選んでいた服に比べたら、ちょっと良い意味でどきどきする気がした。  自分がもし男の人でデートするなら、こういうのがいいよな……。   「――――倉見さん。なんか、ゴメン。あたし店員ばりに色んなもの勧めちゃって……給料日でもないのにずいぶん買わせちゃったけど、大丈夫?すごいゴメン」  江崎さんと彼との待ち合わせ時間が迫った頃、彼女は申し訳なさそうにわたしの荷物を見た。 「いえ、いいんです。自分だけじゃ、自信なくていつも同じようなものしか買えなかったから。楽しかったですよ」
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