2576人が本棚に入れています
本棚に追加
意外、というのが第一印象だった。
30歳と彼は言っていたけれど、聞いていなければもっと若いかと思うくらい、どちらかといえばふんわりと可愛らしい雰囲気の女性だ。
とはいえ、子供が10歳といえば、学生結婚か、少なくともわたしの年には母親だったわけで……人生における覚悟というか、そういうものは全然わたしとは違うんだろうなと尊敬してしまう。
「……ヒロは?」
少し不安そうに諒くんが言うと、お母さんはちらりとわたしたちを見てから、彼に言った。
「……別のところで、待ってるよ。ちょっとね、ショックだったみたいで」
「怒ってた?」
「最初は怒ってたけど、ママが話したから、怒らないよ」
それから、彼女はわたしたちに顔を向けて、言った。
「この子から、なにか聞かれましたか?」
「……お父さんが亡くなって……彼氏さんが、お父さんみたいに良くしてくれる、と」
「そうですか」
彼女は、苦笑いのような笑みを浮かべた。
「……ご迷惑おかけして、言い訳なんて出来る立場じゃないんですけど……しばらく私の仕事が忙しくて、三人で出かけたのは久しぶりのことで、この子が変に気を遣ってしまったみたいで……そうでしょ?諒」
最初のコメントを投稿しよう!