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諒くんが、頷いた。
「だから、俺、留守番でいいって言ったのに、そんなのダメだってヒロが言うから」
「ヒロにはヒロの考えがあるから。……でも、これからはちゃんと諒の気持ちも聞くから。留守番でいい、だけじゃなくてちゃんと話して」
諒くんは、こくりとまた頷き、わたしは言った。
「優しいお母さんじゃない」
「あ。でもこれから叱るには叱りますけどね」
にっこり笑って彼女は言った。
「勝手に居なくなって心配かけるようなことは、もう二度とされたら困りますから。……それに、親に気を遣って、よそ様のデートの邪魔したり、とんでもないです」
……って……
ああ、一応そういう関係に見えるんだ、と思うと、ちょっと嬉しかった。
「邪魔してたのか?お前」
椿田さんが、からかうように諒くんに言った。
「そんなことしてない。おじさんがほったらかしてるのが悪いんだろ」
「おう。そうだな。オッサンが悪いよな。……ってことで、邪魔もされてねえし迷惑もかけられてねぇんで、俺たちの分は叱らないでやってください」
椿田さんがそう言うと、諒くんのお母さんは微笑んで深く頭を下げた。
……それで良かったし、そうやって必要な時に気の利いたことを言えるのがこの人なんだと思うけど、……あんまり他の女の人の前でそういうところを見せないでほしいと思ってしまうのは、わたしの心が狭いんだろうか。
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