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「……それ、答えてもいいのか?」
「え?」
「誰と来たのかって、お前考えるだろ」
あ。
一瞬考えている間に彼は答えてしまった。
「去年の12月だ」
「え!?……」
「なんだその反応は。……高いところは嫌だとか言っといて、女にねだられたらすぐ来るのか、って感じか?」
うっ……。
ていうか、12月って……クリスマスとかイルミネーションとか。
しかもこんな場所。明らかにそういう人たちしか来ないし。
「……誰と来たかも言うか?」
「いえ。いいです」
彼は笑った。
「お前。さっき俺があのかーちゃんと話してる時も、なんか嫌そうな顔してたろ」
「へっ?」
「言っとくが、別に美人のかーちゃんだから気遣ってあんなこと言ったんじゃねぇからな。俺がしょっちゅう親に怒られるガキだったから、小言減らしてやりたくなっただけだ」
「……そんなこと、改めて言われなくても分かります」
「そうか」
分かっていてもどうにもならないから、苦しいのに。
だいぶ上ったので景色は良いはずだけど、わたしは足元の床に目を落としたまま言った。
「……そうやって、あたしをからかうために、わざわざこんなところに来たんですか?」
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