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「最初会った時、お前22って言っただろ。だから、新卒ならこれから誕生日で23ってとこだな、と思ってたから。計算合うな、と」
安直な自分が恥ずかしくもなるけど、そうやってわたしの知らないところで、この人がわたしのことを考えてくれてた、というのはちょっと嬉しい。
「……話戻すけど、さっきあのガキに、半分冗談で恋敵とか言ったけど、事実あっちの方がお前と年近いんだ。俺がどんだけ引け目感じるか分かンだろ」
「……でも、18歳差も19も、そこまで行ったら大して変わりませんよ」
「それ、全っ然、慰めになってねえ……」
その時、がくん、とゴンドラが揺れた。
ずっと話していて気がつかなかったけど、頂上を過ぎたのだ。
「……椿田さん、半分過ぎましたよ。あと降りるだけです」
「それ、俺を気遣ってくれてるのは分かるが。今の話の流れだと、俺の人生言われてるみたいな気がするんだが」
「あ、ほんとですね」
「おい」
なんとなく、笑ってしまった。
「大丈夫です。椿田さんなら、……年取っても、きっと好きですよ」
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