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 金曜日のお昼は、皆なんだか和やかな気がするのは、わたしだけだろうか。  会社の近くのファミレスはいつものように混み合っているけど、笑顔が多く見える。  先輩がランチのスープを取りに行った隙にスマホを取り出して見たけれど、特にメールも何も、表示は無い。 「――――ただいまぁ、と。……倉見さん、どうした?何か凹んでる?」  戻って来た江崎さんが言った。  同じ総務課の先輩、江崎純子さん28歳。ショートカットの似あうサバサバした女性で、でも、こんな感じによく周りを気遣ってくれる。  前の職場ではドロドロした女性の付き合いしか見てこなかったわたしには新鮮で、何より有り難い先輩だ。 「えっと、……凹んでるように見えますか」 「うん。会社で誰かになんか言われたとか?」 「あ、いえ」  派遣社員として、わたしが入社して3週間。  お昼はほとんど家から持参のお弁当だけど、持って来なかった時はこうして外に誘ってくれる。
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