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【25】
ふっと煙を吐いて、彼は言った。
「……悪ぃけど、今日は外でもいいか?」
「あ……はい」
一回行ったからって、図々しかったかな……。
「別にお前が来たら困るってことじゃねえ。手加減出来なそうだから近所メーワクにならねえようにってことだ」
袖にタオルを当てていた手が止まって、次いで頬から耳に熱が上る。
「どうした。顔赤くして」
煙草を咥えて前を向いたまま彼は言う。
「……あの……それはちなみに、どうして今日はそういう気分なんでしょうか」
「最近、なんかヤバくてな。……会えるもんなら毎日でも抱きてぇくらいだし。……てのは、お前が……まぁ、それはいいや」
「あたしが、何ですか。気になります」
「……虫が付くくらい、美味そうな女になってきた、ってことだ」
彼は煙草を灰皿に揉み消す。
「さすがに、先に飯は行くけどな。お前なに食いたい」
気が付くと、皺になるからと預かって拭いてたジャケットをぎゅっと掴んでいて、慌てて手を離した。
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