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【7】
不意のキスに目を開けたままのわたしに気づくと、彼は眼鏡を外しながら言った。
「初めてでもねぇだろうが。瞼ぐらい閉じろ」
「……だって、怒ってたんじゃないんですか?」
一瞬考えるような間のあと、彼は言う。
「怒ってたら、こういうことはしねえと思ってたのか?」
わたしは頷いた。
「……違うんですか?」
「……キライじゃねえから怒るんだろーが」
背中が、シートに押し付けられて、重なった唇から彼の舌が割り込む。有無を言わせない強引なキスで、彼はわたしの中をかき乱す。
「ンっ……」
熱く、絡んで、待ってたみたいにわたしの体は溶けそうになる。離れる瞬間、生々しい感触があって、唇から糸を引いた。
「あ……」
わたしの濡れた唇を親指で拭って、彼は言う。
「いい子だ。ちゃんと覚えてるし、やらしくなったな。……他の奴と『練習』したりしてねぇだろうな」
「……そんな、わけ……あっ」
首筋、指先でなぞられただけで、ぞくぞくと電気が走る。わたしは首を横に振る。
「……椿田さんじゃなきゃ……やです。……椿田さんじゃなきゃ……こんなに、ならないです」
「そうか」
言うなり彼はわたしに被さって、そのままリクライニングを倒した。
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