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【10】 番外編 『都合のいい女』
「――――聞いてます?椿田さん」
テーブル挟んで向かいに座っている涼子が、身乗り出して言った。
「聞いてるよ。学生ん時は、彼氏が居て浮かれてる女見ると、バカみたーい、って思ってたって話だな」
「……そんな風には言ってませんが、そういうことです」
むっと不満げな表情を浮かべてビールを飲む。
一本目のはずだが、だいぶ回ってるように見える。
急な誘いの上に、反省するようなこともやらかしたので、それなりものを食わせてやりたかったが、部屋でコンビニ食でいいと言われた。
いいお店は緊張しそうだから、と。
まだ可愛いといえば可愛いが、欲が無さ過ぎて切なくもなる。
「そう思ってたけど、今は彼女たちの気持ちが分かるから、……そういうのを教えてもらってありがとうございますって話です」
狙いもせずに、人の心臓素手で鷲掴みにするようなことを言いやがるし。
「……そりゃ、人並みの感情が分かって、なにより」
こっちは、煙草が吸いたいが、食ってる前で煙ふかすのも気が引けるので、こいつの食事が一段落するまではと9%の酎ハイ流し込んで紛らしてるところだ。
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