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【2】
「……都合のいい……」
「あたしも、前にそういうことあったよ。何度か二人で会って、付き合いたいって言ったら、そういうんじゃないって断られて。でもしばらくしたら、また飲みに誘われて。……結局、いつでも捕まる都合のいい女だと思われてるだけなんだと思って断ったけど。そういう自分勝手な男って、多分倉見さんみたいな大人しい子が好きだから、気を付けなよ」
「はぁ……」
あの時『また会ってくれますか』と言ったら『次会ったら俺からは退かない』って言ってたけど、……いまいち、その意味自体分からないし、そもそも『次会ったら』だし。
でも、都合のいい女っていうなら、あの人なら、わたしみたいな子供で扱いにくい女じゃなくて、本当に大人で割り切れてる女友達が居そうだけど。
と、ちらっと思うだけで、すごく胸がモヤモヤしてくる。
わたしにしたように、誰にでもああやって、優しく。
心にも体にも優しく触れて、開いて――――。
「……倉見さん。おーい。帰ってこい」
「あ、はい?」
ぎゅ、と制服のスカートを握りしめた時、江崎さんの声でわたしは我に返った。
最近、自分がものすごい嫉妬深い人間だったんじゃないか、と思わされる。
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