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【17】
ぶすっ、とわたしは頬を膨らませて、日本丸を望む階段に座っている。
もし本当にそう言ってくれたのに忘れているなら、わたしが悪い。けど。
だったら言ってくれればいいのに。
こっちだってその問題は、聞いていいものかどうか悩んでたんだから。
彼は近くの喫煙所に行った。
ここで待ってるとは言ったけど、……ナンパでもされたら、彼がやきもち焼く程度に話ぐらいしてしまおうかと思う。
見上げると、青空に風をはらんだ白い帆が映えて、綺麗だ。
今日は、普段は畳んである帆が開く日だし、こういう景色が見られたらいいだろうな、と思って来たんだけど……。
あれ。
……空見てたら、なんでか、涙出る。
昨日あんなに、嬉しいこと言ってもらったのに。
大事に思ってもらってるのは分かる、けど、好きとか、そういう約束めいたことは彼は言わないから……何で、お酒の場とかじゃなくて、普通の時に……。
「泣いてるの?」
突然の声に驚いて隣を見ると、いつのまにか小学生くらいの男の子が、しゃがんでわたしを見ていた。
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