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【19】
戻って来た椿田さんを見て、諒くんはビクッと飛びのく。
「……椿田さん。まだ小学生なんだから、そんな言い方しなくても」
「恋敵は早めに潰すに限んだよ」
「は?」
「それより、話は出来たのか」
「あ。はい。……あたしが心配したようなことじゃ、なかったです」
「フン。……」
椿田さんは腕時計を見て言った。
「もうそろそろ時間だろ。かーちゃんに電話したらどうだ。場所分からなきゃ、連れてってやるから」
「……一応、面倒みる気はあるんですね」
「当たり前だ。……どうした?ガキ」
さっきまで普通の様子に見えた諒くんは、黙って俯いてしまった。
「……もしかして……怒られるかも、とか思ってる?お母さんたちに」
彼は小さな声で
「少し」
と答える。
「そりゃ、しょうがねぇな。心配かけるような真似したんだから」
「でも……別に悪いことしようと思って……」
思わず口を挟んだけれど、椿田さんはわたしの方は見ずに、諒くんの前にしゃがんで視線を合わせて言った。
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