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その直後、彼を囲んでいた使用人は全員その場に倒れ、息絶えた。
そしてこの出来事がきっかけで正真正銘悪魔の子と呼ばれたハンスはその日の夜に最も信頼していた侍女に切りつけられたが隙を見てナイフを奪うと窓から飛び降りて深い森の奥へと逃げた。
――何故、自分なのか。
走っているうちに徐々に遠くなる意識の片隅でひたすらその問いを繰り返す。
――決して望んだわけではない。何の役にもたたない、こんな力。
まだ七つの子供である彼にも使用人たちが自分の言葉に秘められた呪いで死んだということは分かっていた。
――でも、死んで当然じゃないか。傷つけるなら僕だけにしとけばよかったのに。お前たちがあの子を殺すから。
ハンスは足を止めると、とうとう倒れてしまう。仰向けに横たわる彼の目に木陰からそっと忍び寄る二匹の狼が映る。
恐怖を感じた彼は深く考える間も無くこう口走っていた。
――腹が減ってるなら共食いでもすりゃいいじゃないか。
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