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彼のことをよく知っている人間ならこの後何が起きたか想像出来るはずだ。
ハンスを狙っていた二匹の狼は彼の言葉通りに共食いを始めたのである。もはやハンスのことなど眼中にない様子で。
――この力は人間以外にも通じるのか。
唸る声、肉を食い千切る音、噴き出す鮮血。その全てが彼を朦朧とさせる。思いのままに死へと導く悪魔の力を改めて知ったハンスが覚えた感情は『快感』。
やがて二匹はもつれあったまま互いに力尽き、動かなくなった。
それを最後にハンスは目を閉じる。数人の足音が聞こえたが、もはや彼には再び目を開ける気力さえも残ってはいなかった。
その後、気を失ったハンスは黒ずくめの男たちによってどこかへ連れ去られていった。
――使えそうなガキがいる。
森の洞窟を住処にしている男たちはそんな気まぐれにも近い理由でボロボロの少年を拾ったのである。
後に目を覚ましたハンスは彼らの正体が盗賊であることを知った。
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