尊氏の憂鬱

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「俺は赤松円心の三男坊。息子でないと、あんたは話を聞かないと思ってな。他に三人息子がいるので取り換えはきくし、今狼藉者といって切り殺してもいいんだぜ?」 「……」  なんだかおかしくなって、あはははは、と笑いだした。 「殺せないよ。君が寝首をかくことはできない。淵辺みたいなのに絡まれる間諜に僕は殺せない」  とたんに、むっとする雰囲気になったので、おかしくなる。  人を魅了する雰囲気を持っていても、若造は若造だ。 「俺は主上とも大塔宮とも仲がいいんだ。はい」  大塔宮……と高氏は考える。  そういえば、後醍醐天皇の第一皇子が大塔宮と呼ばれ、各地で転戦していたそうだ。  はい、と手渡しされた手紙はー― 「綸旨!?」  後醍醐天皇の綸旨だった。  朕につけ、そして幕府軍と戦えという内容の綸旨。
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