尊氏の憂鬱

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「まあ、考えてみてよ。俺は渡してくれって親父に言われただけだから。あんたながらやれるって、俺は信じてる」 「……」  少し考えごとをしている隙に、すっとその姿は消えた。  なるほど、赤松円心の三男坊は間諜向きだと考えたくなる。 「御家人たちの望む世……」  祖父はこれを言いたかったのではないか?   自分で幕府を築くのではなく、後醍醐天皇という強力な帝の手足となって働くことを。 「……」  高氏はまんじりもせず、夜を明かした。
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