六波羅の嘆き

2/10
前へ
/42ページ
次へ
 結局高氏は名越も仲時も裏切った。  名越高家は、赤松円心・千種忠顕・結城親光(ゆうき・ちかみつ)らとの戦いでじりじりと後続に現れるだろう高氏を待った。 「足利殿はまだか。まだなのか」  しかし、家来の言うことにはこうだ。 「足利高氏殿――謀反。野で酒盛りをしております」 「なにいっ」  足利殿、恨むべし。  そのとき、ひゅ、と勢いのつく矢が降ってきた。 「殿!」  目の前にかばう兵が、どうと血を噴出して倒れた。 「殿!」  二度目もその矢にかかる前に、兵が血しぶきをあげて倒れた。  矢を放ってくるのは、どんなやつだ。どんな――  二十歳くらいの僧形の男だった。 (これが私を殺す男か)
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加