六波羅の嘆き

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 三度目の矢を放つのを見る前に、首に何か熱くて痛いものを感じた。  その瞬間、名越の意識は途切れた。そして、どうと落馬した。 「赤松円心が家臣、作用範家(さよう・のりいえ)、総大将・名越高家の首、打ち取ったり」  若者が意気洋々と腕をあげた。 「あ、ずるい。俺だって追いつめたのに」  僧形の若者――則祐はぶつぶつ言う。 「あれだけかっこつけておいて人の手柄。げはははは!」  四男が言うのを、 「あ、ここにも敵が」  きりきりと至近距離で弓をひく則祐は、本気の目をしていた。 「やめて則祐兄貴、兄貴たちー、則祐兄貴をぶっ殺してよ」  物騒なことを言い合う兄弟だった。  そうは言っても赤松軍の勝ち戦だった。  総大将を失った幕府軍は、ちりじりとなり、この戦いに敗北した。
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