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「足利一門、謀反」
それを言うのは、仲時の一の家臣、糠谷宗秋(かすや・むねあき)だった。
「名越殿が討たれました」
「足利殿が……?」
北条仲時は六波羅探題、また持明院統の天皇を守るひとりとして、呆然とした。
「嘘だ。だって足利殿は私についてきてくれるって言っていた」
「しっかりなさいませ、探題殿。足利高氏が裏切ったのも、名越高家殿が討ち死にしたのも、本当のことですぞ」
気弱な仲時は頭をぶるりとふるった。
「かくなるうえは、切腹しかないのか」
「わ、我々も」
「探題殿が切腹するなら私も」
と死に逃れようとするのを阻む声があった。
「仲時殿っ」
馬に乗りつけ、やってきて声が大きいのは、六波羅探題南方の北条時益(ほうじょう・ときます)である。
「仲時殿! なにをしょげた顔をしておられる。我らもかくなるうえは、逆賊足利と戦いましょうぞ」
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