六波羅の嘆き

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 高氏たちの手は六波羅にまで及んだ。  猛攻に敗色が濃くなった六波羅探題は、北方を務める北条仲時、南方の北条時益らとともに、一旦、六波羅を捨てて関東へと退く事となった。 「こうなれば、今上や皇族方と一緒に逃れましょうぞ――賢助(けんじょ)殿」 「はい」  と言うのは、醍醐寺から呼び寄せた高僧であった。 「六波羅をお守りいたします。私は命を懸けて、護摩壇を焚いて足利を調伏いたします。それから――賢俊」  弟子である、日野賢俊(ひの・けんしゅん)をちらりと見た。 「はい」  仲時らが行ったのを見て、賢俊に言った。 「そなたが三位局殿の間諜をしていたのは知っている。けれど、日野の一族が次々と後醍醐上皇にの身代わりに流しにされるのを見て、悔しくないのか」
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