5人が本棚に入れています
本棚に追加
三種の神器は後醍醐天皇が入洛する朝廷に置かれた。
そして鎌倉では動乱が起ころうとしていた。
「北条氏のお姫様。千寿王様は、千寿王様はどこにおられる」
ここは下野国にある高氏の住まい、足利荘。執事の高師直がずんずんと歩いてきた。
「師直。無礼ではありませんか」
登子はきっとにらみつけた。
「失礼、北条氏の姫」
気がいら立つのを覚えた。この女性をたぶらかしてばかりで、無礼な執事は登子を北の方とも思っていない。
「お方様と呼びなさい」
もう何度か言いかわした言葉。
いつもだったら、もうふたつかふたつか皮肉を言って、そして「お方様」と言ってそれでおしまいになるのだが、今回は違った。
最初のコメントを投稿しよう!