北条の姫

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 三種の神器は後醍醐天皇が入洛する朝廷に置かれた。  そして鎌倉では動乱が起ころうとしていた。 「北条氏のお姫様。千寿王様は、千寿王様はどこにおられる」  ここは下野国にある高氏の住まい、足利荘。執事の高師直がずんずんと歩いてきた。 「師直。無礼ではありませんか」  登子はきっとにらみつけた。 「失礼、北条氏の姫」  気がいら立つのを覚えた。この女性をたぶらかしてばかりで、無礼な執事は登子を北の方とも思っていない。 「お方様と呼びなさい」  もう何度か言いかわした言葉。  いつもだったら、もうふたつかふたつか皮肉を言って、そして「お方様」と言ってそれでおしまいになるのだが、今回は違った。
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