5人が本棚に入れています
本棚に追加
名前くらいは聞いている。
高氏から、あいつは幼少期からつっかかってくるやつだから、と。
「新田義貞も八幡太郎義家の血筋――殿が後醍醐天皇の配下につくとき、手柄も血筋も勝る武士がいては困るのです」
「だって殿は六波羅探題を助けにいったのよ」
ふ、と鼻先で笑われた。
「殿は心の内をあなたには明かしていないようだ。殿は赤松円心と結城親光と楠木正成についている。探題の時仲殿も、南方の時益殿も、一緒に進軍した名越高家殿も死んだ。そう仕向けたのは殿です。新田義貞も今や後醍醐天皇の武士だ」
「――」
登子は真っ青になって膝から崩れおちた。
後醍醐天皇の味方になるということは、幕府の敵となることだ。
(私は……いらないのね。よりによって、兄が北条の執権なのだから)
最初のコメントを投稿しよう!