北条の姫

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 名前くらいは聞いている。  高氏から、あいつは幼少期からつっかかってくるやつだから、と。 「新田義貞も八幡太郎義家の血筋――殿が後醍醐天皇の配下につくとき、手柄も血筋も勝る武士がいては困るのです」 「だって殿は六波羅探題を助けにいったのよ」  ふ、と鼻先で笑われた。 「殿は心の内をあなたには明かしていないようだ。殿は赤松円心と結城親光と楠木正成についている。探題の時仲殿も、南方の時益殿も、一緒に進軍した名越高家殿も死んだ。そう仕向けたのは殿です。新田義貞も今や後醍醐天皇の武士だ」 「――」  登子は真っ青になって膝から崩れおちた。  後醍醐天皇の味方になるということは、幕府の敵となることだ。 (私は……いらないのね。よりによって、兄が北条の執権なのだから)
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