北条の姫

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 しかし、崩れ落ちているのはそこまでだった。 「お母しゃまー、お母しゃまー」   幼い手がこちらに助けを求めている。 「千寿王を返して! 母親はどうあれ、父は間違いなく殿よ」 「だから、駒になりうるのです。手柄は殿のものになる。千寿王様―、これから一緒に鎌倉を焼き討ちしにいきましょうね」 「やー、もろなお、やー」 「やめて、返して」  まとわりつく登子をまた振り払い、師直は千寿王とともに馬上の人となった。
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