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師直が密かに東勝寺からとある稚児を救い出したことは知っている。
この時、東勝寺は焼失したが、直ちに再建され、新たな東勝寺が建てられたのだった。
こっそり、東勝寺へその稚児の顔を見にいったのだ。
女の勘が働いていた。
「新熊野」と呼ばれるその稚児の顔を見たときには、高氏そっくりで、気絶しそうになった。
(殿の隠し子……千寿王のかわりも、わたくしの代わりもあるということね)
そうして、憤懣を心の中でくすぶらせている最中、足利邸に手紙が送られたのだ。
『お方様。あなたは北条の姫君。前執権・高時様が一粒種、亀寿丸様を奉じて、一緒に諏訪に行きませんか。もちろん千寿王様も一緒に連れてきてくださいね』
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