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「これは――」
謀略とは程遠い人生を送ってきた登子にもわかった。
高氏を裏切れというのだ。
そして母子ともども人質になれというのだ。
(千寿王とともに殿を裏切れというのね)
少し考えた。千寿王とともに新しいところで幸せになるところを。
――殿のいない幸せなんて!
「ばかね。わたくしが殿を裏切ることがないじゃないの」
亀寿丸はいたいけな少年だ。
同じ北条一族として、大事に守り育てなければいけないとわかっていたが、今の自分は足利の棟梁の正室だ。
「この手紙を書いたのは本当に北条の者なのかしら……確か、亀寿丸様は諏訪盛高殿に匿われてすでに諏訪に行っていると聞くわ」
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